ライアー 15
アキヒトが里子に出されたのは中学一年生の時だ。
子供の出来ない、かなりの上流家庭に養子になる前提で行ったらしい、と母さんが話してくれた。
本当は母さんがアキヒトを引き取りたかったんだけど父さんがどうしても了解しなかった、と母さんは前に話していた。
「資産家なんだよ、俺を引き取る奴ら。だからちょっと取り入ってやったのさ。チョロいもんだぜ、相手が欲しい言葉と顔をくれてやりゃあいいんだからな」
アキヒトは下卑た笑いを浮かべて僕の肩を叩いた。
僕は複雑な気持ちで、そうと呟いた。
アキヒトの金や物に対する執着は激しくなる一方で、まるで満たされない何かを補おうとしているみたいだったから。
「悠、金で買えないものなんて本物じゃないんだぜ」
そんな言葉を嘯いては、顔をしかめる僕を笑った。
一見、小綺麗で凛とした佇まいに見えるアキヒトの内面に巣食う卑しさに気づく大人はいなかった。
昔のアキヒトを知っている教師たちでさえ、アキヒトを素晴らしい模範生として見ている。
その生い立ちも、いまや美しい彼の「神話」だ。
でも僕には見える。
透けて見える。
あの日、僕を見つめた本当の痛みが。
子供の出来ない、かなりの上流家庭に養子になる前提で行ったらしい、と母さんが話してくれた。
本当は母さんがアキヒトを引き取りたかったんだけど父さんがどうしても了解しなかった、と母さんは前に話していた。
「資産家なんだよ、俺を引き取る奴ら。だからちょっと取り入ってやったのさ。チョロいもんだぜ、相手が欲しい言葉と顔をくれてやりゃあいいんだからな」
アキヒトは下卑た笑いを浮かべて僕の肩を叩いた。
僕は複雑な気持ちで、そうと呟いた。
アキヒトの金や物に対する執着は激しくなる一方で、まるで満たされない何かを補おうとしているみたいだったから。
「悠、金で買えないものなんて本物じゃないんだぜ」
そんな言葉を嘯いては、顔をしかめる僕を笑った。
一見、小綺麗で凛とした佇まいに見えるアキヒトの内面に巣食う卑しさに気づく大人はいなかった。
昔のアキヒトを知っている教師たちでさえ、アキヒトを素晴らしい模範生として見ている。
その生い立ちも、いまや美しい彼の「神話」だ。
でも僕には見える。
透けて見える。
あの日、僕を見つめた本当の痛みが。
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