それぞれの明日 15
「嫌だね」
圭は意外そうに眉をあげてみせた。
まるで敵前逃亡した兵士を嘲笑うように。
なんとでも思えばいい。
「…じゃあ、君のところまで連れてきてやろうか?
たまには親子水入らず…」
…
目の前が唐突に暗くなって息が出来なくなった。
呼吸が意思に従わない。 待て、落ち着け。
待て…待って、嫌だ。
思い出すな、飲まれるな。
嫌だ…助けて。
あいつが…あいつが俺に触れて、髪をひっ捕まれて服を…。
暗闇が足元に口を広げて、そこに吸い込まれていく…
奈落へ引きずり込まれるより一瞬早く、全身を包む暖かさに気づいた。
…。
なんだ…これ…?
「…ぃ、おい、しっかりしろよ、アキヒト!!」
圭…?
圭だ。
圭が俺を抱き締めている、いや、墜ちていくのを抱き止めている。
俺はお前にとって敵でしかないんだろ?
それでも俺はされるまま、抱き締められていた。
何かを考える余裕が…ないし、暖かさは身体の奥まで染みていく。
虚ろな思いで体を圭に預けながら、見上げてみた。
そこには心底心配そうな目が俺を見下ろしていた。
圭は意外そうに眉をあげてみせた。
まるで敵前逃亡した兵士を嘲笑うように。
なんとでも思えばいい。
「…じゃあ、君のところまで連れてきてやろうか?
たまには親子水入らず…」
…
目の前が唐突に暗くなって息が出来なくなった。
呼吸が意思に従わない。 待て、落ち着け。
待て…待って、嫌だ。
思い出すな、飲まれるな。
嫌だ…助けて。
あいつが…あいつが俺に触れて、髪をひっ捕まれて服を…。
暗闇が足元に口を広げて、そこに吸い込まれていく…
奈落へ引きずり込まれるより一瞬早く、全身を包む暖かさに気づいた。
…。
なんだ…これ…?
「…ぃ、おい、しっかりしろよ、アキヒト!!」
圭…?
圭だ。
圭が俺を抱き締めている、いや、墜ちていくのを抱き止めている。
俺はお前にとって敵でしかないんだろ?
それでも俺はされるまま、抱き締められていた。
何かを考える余裕が…ないし、暖かさは身体の奥まで染みていく。
虚ろな思いで体を圭に預けながら、見上げてみた。
そこには心底心配そうな目が俺を見下ろしていた。
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