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予感 30

[4437]  輪廻  2010-10-17投稿
翌朝は昨日とうって変わって、冷え込んでいた。
美紀は寒さにうっすら目を開け、
隣にいる功一郎に寄り添った。


守たちの出張先も同様だった。
先に起きた守は、成美にもう一枚ブランケットをかけてやった。

成美は無防備な寝顔で、
少し微笑んだように見えた。

しばらくして服を着ていると、どこにあったのかバスローブを着た成美が起きてきた。

「おはようございます…。風邪引くかと思いました」

「おはようございます。本当ですね。大丈夫ですか?」

「はい………今日は昨日よりもっと急いで、あさってには終わらせましょう!」

「やる気ですね、頼もしいなぁ。朝食は下のレストランでどうですか?」

「いいですね!」

こちらに来る前の2人とはまるで違う信頼関係が築かれていた。
少数精鋭の守たちの会社では、ほとんどの社員が顔見知りだが、勿論ここまで深く関わり合うことはない。

「美味しい、朝からホットケーキなんて贅沢」

「作ったりしないんですか?」

「料理は軽いものしか…それにお菓子とかこういうものは作ったことがなくて…」

「今度試しに作って下さいよ」

「はい!是非……」

その瞬間2人は、はっとして、
気まずい沈黙が流れた。

―今度、は無いのだ。
こんな甘いひと時は、来ないのだ―\r

成美の食事の手が止まった。


「無神経でした…すみません」

守は謝った。

「ほ…ホントに!無神経……です…よ」

またしばらく沈黙が流れた。

成美は顔を伏せた。

ぽたぽたと雫が成美の伏せた顔からこぼれた。

「成美……」

「ごめん…なさい……急に…あなたと…会えなくなるって…思ったら…」

栄転する自らの身では、かけてやる言葉も無かった。
ついて来いという言葉を口にする資格もなければ、口にする意味も無かった。

お互いに既婚者。

出会った時から決まっていた事だった。

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