紺碧の空に星 1
春臣に何回も犯されたのに自分自身が穢れたと、感じたことはなかった。
それなのに血液という赤い液体にまみれた両手は熱くて、汚ならしかった。
倒れた母親を見下ろしているのは本当に僕?
春臣が、僕に近づいてきたことにも気づかなかった。両頬に手を添えられるまで気づかなかった。
「理央!」
カラン、と包丁が落ちた。
春臣が僕を引きずって手を洗わせた。
上着を脱がせて、春臣がそれを着た。
僕はそれをただ見ていた。ただ、受け入れてされていた。意味が解らなかった。
世界はモノクロ。
ただ、手にまといつく流した筈の血液だけに色がついてる…白い手に残る赤。
春臣は落ちた包丁を握って床に倒れたままの母親を仰向けにし、染みだしている血を両手になすりつけた。
「理央、時間がない…聞こえるな?
刺したのは俺だ。
一切、口をきくなよ?
約束だからな」
うるさいサイレンが鳴って…母親と僕は病院に。
春臣はパトカーに乗って。
僕の記憶は相変わらずモノクロ。
傷口の赤と、春臣の…最後のキスだけが
僕のなかのカラー。
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