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セタンスクレ3

[1690]  イサヤ  2010-11-21投稿
俺が力任せに引っ張ると黒川さんはバランスを崩して
俺にもたれかかって来た。
とたん独特のアルコールの匂いが鼻をつく。

「うわ、酒臭っ。」
「はぁ?お前に言われたくねぇ」
「え、俺呑んでませんけど…」
「嘘吐け。いただろ原島と」

いや、いたけど俺今日ジュースしか呑んでないし…
て…

「…何で知ってるんですか?」
「俺もいたからな。カウンターに」


……………


「え?…誰と」
「独り。だからよく聴こえてたぜお前の話は」




やべぇ。普通に。

『もっと周りをよく見ろよ』
原島…アイツ気付いてたな。
どうりでやたら所長の肩をもつハズだ。

「ごめんなさい。」

「何だ。謝るような悪口でも言ってたのか?」

「いや…言っ…たかも、しれないです。」

この試す様な言い回し。すげぇ怖い。
何言ったっけ?何かやばい事言ってないっけ?
…分かんない。あんま頭使って喋ってなかったし。

「もういい、帰るわ」
そう言っておぼつかない足で歩こうとする。
何か見てて痛々しい程歩けてないんだけど、
さっき地面に座ってたし…もしかしてだいぶ呑んでたんじゃ?

「え?所長、そっち駅ですけど」
「だから?」
「(…いやいやいや)もう終電終わってますよ?」
「…は?」
「!、危な…ッ」

またバランスを崩した所長をマンガみたいには助けられなかった。
こけた。それも正面から。

あぁ…痛そう。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけねぇだろ殺すぞ」
えぇー。すごいなぁこの人やっぱり
「家は何処なんですか?」
俺は所長を抱きあげながら
返答に口があんぐりした。

「めちゃ…めちゃ遠くないすか?」
何とこの人は毎朝約2時間もかけて会社まで来ていたらしい。
なにゆえに…
俺なんて徒歩でも20分あれば帰れる距離なのに…

よく面接が通ったもんだ。

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