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さよならは五分前 11

[1121]  にゃんこ  2010-11-26投稿
冷たい沈黙。

一言でも発したら止まらなくなる、お互い。

二人は静まり返ったアパートを見上げ、階段を上がっていった。

鍵を差し込み、海斗が簓を招く。

「お邪魔します…」

久々に出た言葉は空を漂い虚しく響いた。

スイッチを入れると、すぐに明るくなった。
電気はつくらしい。

八畳と六畳の2DK。 白い革張りのソファに落ち着かない様子で簓が座ったのを見て、海斗は背広を脱ぎネクタイを緩めた。

「着替え適当に出すから…シャワーも出るかな…電気はついたんだし」

「今日はいいです。俺…もう…」

ネクタイをほどいて首に引っ掛けたまま、手で顔を覆った簓の横に腰をおろした
「俺だって怖い」

顔をあげた簓の目が、潤んでいた。
恥ずかしそうに、誤魔化して顔をふく。

「矢倉さんは強いですよ。こんなわけわかんない状況でも冷静だし…俺なんか怖くて…ほら」

自嘲気味に手を見せる。 白く細い指が小刻みに震えていた。

痛々しいくらいだ。
人を跳ねた動揺から、まだ醒めてはいないうちにこんな状況…無理もない。

まだ海斗のコートを着たままの肩にそっと手をかけた


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