ラヴァーズ 1
もう恋なんてしないとか思ってた。
二十歳の頃から三年付き合っていた彼女から
他に好きな人ができた
って言われた時から二年。
もう、絶対好きな人なんてできない、いらない、欲しくないって思っていた。
春の雨が降る四月の日に
彼
と出逢うまでは。
新入社員として同じ課に配属されて
自己紹介に並ばされた時に
俺は既に彼に惹かれてしまっていた。
今まで安っぽく使ってきた「綺麗」という形容詞しか当てはまらないのが悔しいくらい彼は美しい。
綺麗な男なんて気色悪いだけだ、という謝った認識は彼の存在で正された。
こんなに完璧な人が存在するんだろうか?
泉堂 遥(はるか)
彼が良く通る澄んだ声で名前をつげると、早速、職場の先輩から「ハルカちゃん」などと野次が飛んだ。
彼はそれに動じる様子もなく、ただ微笑んだ。
言われなれてるのかもしれない。
決して女の子みたいなわけじゃない。
かといって男臭さはなく、むしろ伸びやかに育った白樺のようだ。
しなやかで、優雅。
目を引き離すのが、こんなに苦労するなんて。
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