ラヴァーズ 3
入社初日、社長の挨拶、自己紹介、部署のそれぞれの主任からの挨拶、とつづいてザッとした研修に入る。
俺らは刷り込みされたアヒルよろしく先輩の後をぞろぞろついていく。
最初の営業は飛び込みじゃなく、ある程度下地がある上でいくから安心しな、と有難い先輩からのお言葉。
ふっと彼と目を見交わして微笑みあった。
「明日から頑張りましょうね、藤原さん」
名字を呼ばれた位で嬉しくなるとは我ながら呆れる。
説明を聞きながら部屋を移動していく最中も、俺は彼が気にかかる。
おい、重症だぞ。
何が悲しくて入社早々、男なんかに恋しなきゃなんないのか。
どういう星回りに産まれついてんだか。
真横に並んだ彼が視線に気づき、ほんのり笑った。
恋ってさ。
不思議だね、望んだところで訪れず
警戒を重ねたところで、心の細かな穴をぬって忍び込む。
どうしようもなく、抗う術もなく。
俺はぎこちなく笑い返しながら、彼を恨んだ。
なんだって、こんなとこに君はいるんだい?
できたら、いますぐに消えてください。
俺の視界に入らない所へと消えて下さい。
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