もうだまされないっ! #2
わたしは『彼』の話は友達にはしない。
わたしの密かな楽しみにしているからだ。
なんと言っても、『彼』は、
¨可愛い¨のだ。
きっと下級生だから出会わないのだろう。
愛らしい瞳、サラサラの艶髪、
たまについている寝グセ、
少し突き出たのどぼとけ、
咳払いをした時に漏れる女の子みたいな声、必死に睡魔と戦う様子…。
「また顔がにやけてるぞ〜、保月(ホヅキ)〜。この英文の穴埋め、やれよ」
「あ!は、はい…」
「サヤのやつ、また…」
「あの授業中に意識がどっか行くのはヤバいよね…」
友人になんと言われても、先生にあてられようとも、わたしはただ妄想することを止めなかった。
僕は『彼女』の話をするような友達はいない。
だから僕の悩みは誰も知らない。
そして意外にも、『彼女』は、
¨綺麗¨なのだ。
きっと上級生だから出会わないのだろう。
誘うような瞳、サラサラの艶髪、
たまに間違っている左右のソックスの色、少し開けすぎてるふっくらした胸元、
小さなあくびの後の可愛い声、
毎日睡魔に負けて眠ってしまう可愛らしい様子…。
「次、夢乃(ユメノ)。この問題、分かるな?」
「あ、はい」
「さすが天才は違うな…」
「授業中に意識がどっか行ってても、望(ノゾム)は答え間違えないよな…」
クラスメイトに気味悪がられても、先生にあてられようとも、僕はただ妄想することを止めなかった。
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