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夜鷹の床(20)

[790] うなぎ 2012-02-05投稿
 ずるり、と、果てた肉片を抜かれると同時、開きっぱなしとなった性器より白濁が溢れ出る。上下に波打つお理津の腹に、投げ棄てるように銭。
「おめぇ、なかなかの名器じゃねぇか。また見掛けたら頼むぜ」
 下帯を締め直し男は去って行った。生い茂る葦の中に残されたお理津は、まるで捨てられたハギレのよう。ぼんやりと仰向けのままにいれば、茜色の天高く青鷺。畜生道に墜ちた身からすれば、なんと空の高きことか。底無しの夕空と迫り来る宵闇に漂う浮遊感は、果たして死んだらこんな感じなのだろうかと思わせた。臍の辺りの冷たい金子と背中の痛みが、お理津を現実へと繋ぎ止めている。
「いてて……」
 彼女は傷めた体を起こして岸辺にしゃがみ、川の水で膣の中を濯いだ。
「今日はもう帰ろう」
 芸のひとつも覚えられれば、遊廓にも入れただろう。が、いずれも地獄に変わりは無い。
「与兵衛さんにこんな傷見られたら、また要らん心配掛けちまうね」
 死ねない理由はただひとつ。自分が生きている事を許してくれる人がいるからだ。


※つづく

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