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夜鷹の床(34)

[621] うなぎ 2012-02-08投稿
「あ、あの……」
 紫乃はちょこんと部屋の隅に正座し、板敷きの木目を見詰めている。顔が少々赤いのは、中庭を照らす暮れの陽射しのせい。
「私に出来る事があれば何だって致しますから、何なりとお申し付け下さい」
「どうした」
「こうして置いて頂けるばかりでは申し訳なくて」
「ははは、なにも気にする事は無い」
 与兵衛は二本差しを抜いて、框にどかりと腰を下ろす。すかさず紫乃は土間から大ダライを引き摺り出し、水瓶から水を掬って注いだ。
「それよりな、紫乃。久間はもうお前を捕えたりしないぞ」
「え?」
「あいつにとっても、美濃屋を突き落としたのが自分の所の奉公人だと都合が悪いのだ。まぁ美濃屋の一件は誤って河に落ちたって事で落着するだろうな」
 紫乃は目を見開いて与兵衛を見詰めた。
「それとな、これからは俺がお前の身請け人だ。そのよう久間の奴に話を着けて来た」
 頭を土間に擦り付けるほどに深々と土下座をする。与兵衛が足を入れる大ダライの脇で、その小さな肩が震えていた。
「もうお前は何も案ずる事は無い。安心してこの長屋で暮らすと良い」
「あ、ありがとうございます!」
 涙を浮かべ鼻を啜りながら、与兵衛の足を洗う紫乃。
「仕官する先も決まったんだが、俸禄を得られるまで暫し掛かる。多少は金子を借りる宛てもあるが、その間お理津の稼ぎでお前とお理津は食わねばならぬ故、多少ひもじくはなるがな」
「そんな、私は置いて頂けるだけで充分です」
 足を洗い終えると紫乃は与兵衛の膝元で鼻をひくつかせた。
「与兵衛様、汗も流しますから、帯を……」
「よいわ。行水ならば自分でやる」
「手伝わせて下さい」
 言うなり紫乃は帯を勝手に解き始めた。どうにも照れ臭いのか、頭を掻く与兵衛。仕方無しと言った具合にゆっくり立ち上がると、着流しを裸ける。下帯を解いた時、紫乃は目の前にぶら下がる逸物に釘付けとなりながらも顔を赤く染めた。
「こら、どこを見ている」
「つ、つい……」
 目を伏せる紫乃は胸を押さえた。与兵衛は構わず大ダライに胡座(あぐら)をかき、浅い水に浸かる。紫乃は顔を赤くしたまま、手拭いを水で湿らせて与兵衛の体を拭き始めた。
「女を孕ませる訳でも無し、たいして役にも立っておらん持ち腐れだ」
「……いいえ。与兵衛様は昨晩、私を天に昇らせて下さいました」

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