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それでも僕は 5

[1981]  ねこ  2009-08-10投稿

それから、先輩は風邪で寝込んでしまった。

あの嫌な咳をしていた次の日から。

そして…それを境に全てが変わってしまった。

屋上に二人はいた。

木崎優輝…転校生と、亮二先輩。

二人は奇妙に馴れ合いながら、一種独特の空気を共有していた。

親密、というのじゃなく…慰め?
癒し…。

初めて、偶然に屋上で二人が唇を触れ合わせた場面を見た時…僕は愕然として…走っていた。

鈍感で、馬鹿な僕は、それを…逃げた理由を突き詰めなかった。

焼かれるような思い。

僕は、先輩の隣にいたかった。

でも今は、木崎がいる。

先輩の自信なげなキスを見て僕は傷ついた。
優しくて、おどおどしていて…泣きたくなる。

あんな目をして、見るなんて。

あんな風に抱くなんて。

どうして…?

どうして僕じゃないの?

その感情は認めたくなかったから、僕は逃げたんだ。

負け犬。

はなから勝負もしない。

人間関係に怯えていたから今更どうしていいか解らないんだ。

僕は…それでも、僕は…


先輩を見つめていたい。
この感情に敢えて名前はつけないけど…僕の視線の先にはいつも二人がいた。

見たくないのに。

見る度に痛いのに。

泣きたくなるのに。




そして、やっと気づいた

先輩が木崎と決着をつけたいま、ようやく言える

恋してる。
好きで好きで、たまらない…。

本当はもっと前から知っていたけど。


僕はどうしたらいいんだろう?

今更気づいてなんになるんだろう?


不器用な僕に答えは見つかるのかな…。


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