遠い日の唄 5
薄暗い部屋で、たいして知りもしない二人がまったりしている。
初めこそ緊張していた少年も、いまや犬なみになついている始末…困ったな、警察に引き渡し辛いじゃないか…。
俺の好きな曲を入れながら聞いてるだけの時間なのに妙に楽しい。
ユウは無邪気にリモコンをいじりまくり、変な演歌とか入れて二人で爆笑してしまった。
が、
あるフレーズが画面に浮かんだ瞬間、ユウの目が見開かれて笑顔が消えた。
君といた日々が
すべて幻なら
そんな現実など
僕は受け入れたりしない
俺の好きなバンドの唄を ユウは静かに聞いて…唐突に曲にあわせて口ずさんだ
もしも僕が消えてしまったなら
君は僕を捜してくれるのかな
そんな考えを笑ってくれる「君」という存在だけが
たった一つだけの
リアル
…ユウの澄んだ声がゆっくりとした曲調に溶けて消えていく。
マイクがなくても響く、透明な歌声に満たされていく…。
…気がつくと、ユウは泣いていた。
泣きながら歌っていた。
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