遠い日の唄 7
題名を噛み締めるように呟き、泣きながら俺を見上げるユウ。
その顔は痛々しいくらい必死だ。
「ねえ、僕…わかんないよ…僕の場所はどこにあるのかなあ?
…僕はココがいいよ。
この世界がいいよ。
帰りたくない!
帰りたくない、帰りたくない、鋼さん、僕は…嫌だよ…嫌だ…」
すがるように泣いているユウの涙を指でぬぐってやり…強く抱き締めた。
ユウには何かある。
それがなんであっても、俺は…。
守りたい。
さっき会ったばかりの相手にそう思えるなら、それならもういい。
それでいい。
後付けで考える部分は余分なんだ。
俺は、ユウの細い身体を折れそうなくらい抱きしめて…見つめた。
「鋼さん…」
唇との隙間…三センチの距離を阻むもの
それは
相手のことを知らない。
…なら知ればいい。
一センチ、近づく。
男同士だ。
…それでも、したい。
一センチ、近づく。
相手の気持ちがわからない
…知りたいから…キスしたい。
俺たちの間に、隙間がなくなる…。
唇は重なった。
俺たち、知り合ってからまだ二時間半…。
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