遠い日の唄 9
ユウの言ってる意味は解らないが、ユウが本当に震えているのを感じていた。
消えてしまいそうなくらいか細い身体がしがみついてくる。
必然だったんだろう。
きっと。
ユウは神様がくれた贈り物なんだ。
でなけりゃ、こんなに愛しいわけない…俺は一目惚れなんて信じないのに。
同性でも…こういう出逢いはあるんだろう。
ないなんて、誰にも言わせない。
構わない。
「ユウ」
今度こそ躊躇なく、俺達は唇を重ねた。
ユウは、必死で答えてくれる…そのたどたどしさが痛くなるくらい愛しい。
大事にしたい。
壊したい。
相反する気持ちに、自分自身が戸惑い流される。
「鋼さん…」
雨が降ったあとの蜘蛛の巣みたいに。
暗闇にかかる爪みたいな三日月のように。
捕らわれてしまった。
堕ちてしまった。
これが、恋だ。
今までの恋が幻のように曖昧に消えて、突き動かされるような激しい色で塗り替えられてしまう。
ユウ。
ソファーに押し倒して見下ろしている俺は
きっといつもの俺じゃないんだ。
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