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遠い日の唄 12

[1946]  にゃんこ  2010-01-13投稿

しばらくユウを抱き締めたあと、俺達はカラオケ屋を出ることにした。

ここでこうしていると、何かに急かされているようで落ち着かないから。

ユウを助けたい。
助ける術が解らない。

ユウは冷たい手に息を吐きかけながら横を歩く。

俺は何も言わずにユウの手を握り、自分のコートに引き入れた。

「鋼さん…」

「ん?」

ユウは、ふっとため息をついたあと俺にチラッと目を向けた。

「泣いてごめんなさい」

バカ。

それだけ言って先に進む…寒い。
雪が積もっている。

白い白い道を俺達の足跡が汚していく。

「…僕、ずっとずっと…雪を見たかった。
だから、願ってたんだ。
そうしたら…本当に願いは叶って…しかも、鋼さんと出逢えた。
僕、もうなんにもいらないや…」

鈴みたいな声で、ユウが呟いて…それから、手が引き抜かれた。

「ごめんね」

「…?」

ユウを見る。

身体が硬直した。

ユウは、透き通っていた。
ユウの身体の中を粉雪が通って行く…ひらひらと。
…これは…現実なのか?

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