遠い日の唄 12
しばらくユウを抱き締めたあと、俺達はカラオケ屋を出ることにした。
ここでこうしていると、何かに急かされているようで落ち着かないから。
ユウを助けたい。
助ける術が解らない。
ユウは冷たい手に息を吐きかけながら横を歩く。
俺は何も言わずにユウの手を握り、自分のコートに引き入れた。
「鋼さん…」
「ん?」
ユウは、ふっとため息をついたあと俺にチラッと目を向けた。
「泣いてごめんなさい」
バカ。
それだけ言って先に進む…寒い。
雪が積もっている。
白い白い道を俺達の足跡が汚していく。
「…僕、ずっとずっと…雪を見たかった。
だから、願ってたんだ。
そうしたら…本当に願いは叶って…しかも、鋼さんと出逢えた。
僕、もうなんにもいらないや…」
鈴みたいな声で、ユウが呟いて…それから、手が引き抜かれた。
「ごめんね」
「…?」
ユウを見る。
身体が硬直した。
ユウは、透き通っていた。
ユウの身体の中を粉雪が通って行く…ひらひらと。
…これは…現実なのか?
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