「速人? ここ入るぞ? 」
富継が速人の手を引っ張る。その先には、ラブホテルの看板が光っていた。
「果茄さん? 冗談じゃなかったんですか〜 ??? 」
「いいからいいから? 早く来いよ? 」
「よくないですよ〜 ? ぼくにも心の準備ってものがあります? 」
「おめえ男だろっ? もっとワイルドにいかんかい? ワイルドに?」
「何の話ですかっ? 」
「好きな女がいたら押し倒してでもイッパツやりゃいいんだよ?? 」
尚もグイグイと速人の手を引っ張る富継だった。
「そんな事できませんよ〜? 」
「オレぁ酔っ払っちまってもう眠いんだ? おめえが話があるって言うから散歩に付き合っとるけど、歩くのも限界なんだよ? 話はラブホの中で聞くから、黙ってついて来やがれ?? 」
罵りられて速人は、ゾクゾクとした不思議な快感を覚えていた。
「果茄さんが酔ってるのを知っていたのに気遣いもしなくてすみませんでした… ぼくが何もしなければ良いだけの話ですもんね? 休憩だけしましょう? 」
「おう、ヤリたきゃやらしたるぞ? 」
「ハハハッ??」
二人は怪しげな建物の中へと消えて行った。その様子を物陰から監視していた美希の姿があった。適当な言い訳をつくって、ミリイ達と別れてきたのだった。
美希には富継達の会話は聞こえていない。速人をラブホテルに無理矢理連れ込む富継、という図だけだ。怒りと悔しさでワナワナと震える美希だった。
「あの女、絶対ブッ殺してやる? 」
美希の嫉妬がこのあと大事件を引き起こすのであるが、何も知らない富継はベッドへ着くなりスヤスヤと深い眠りにおちていた―――