「はぁ……願い?」
自称、魔界からきた悪魔ッコの謎めいた電波的な発言に僕は顔をしかめた。
「そっ、君の願いを叶えてあげる為に魔王様に命令されて、来たって訳」
言いながら僕を見つめて悪魔ッコはニカッと笑った。
とりあえず、来てくれなんて頼みもしていない僕の意思は、魔王様と魔界とやらでは完全に無視らしい。
ここに両者の意思のすれ違い極まれり。
おお、正にありがた迷惑だ。
「ふーんっ、そっか……僕の願いを叶えにわざわざ魔界くんだりから来てくれたんだ」
僕はわざとらしくつくった笑顔と共に、少女の肩をポンっと叩いた。
「ん、そうだよ。んで……なんか願いある?」
笑顔で尋ねる赤髪の少女から目を反らした僕は、後方にある窓を指差し、笑顔でこう『願い』を告げた。
「まぁ……とりあえず帰れ、もしくは出ていけ」
「無理っ」
とびっきりの笑顔で即答。
「ふざけんな、僕は別に来てくれなんて一言も頼んでないんだぞ」
怒鳴る僕をせいする様に両手を上下させ、まぁまぁ落ち着いて寅さんのポーズをとりながら相変わらずの笑顔で少女はこう言った。
「だから、魔界の会議で決まった事だから仕方ないって」
やはり僕の意思は無視らしい。
「つーか、お前な……勝手に僕の家にあがりこんできたんだから、住居不法侵入罪で警察に通報するぞ」
「ん……それは違うよ。ちゃんとドアをノックして、カギが開いてるのを確認してから、ぐっふっふ……失礼するよって入ってきたから」
馬鹿だ……コイツ。
「それを世間じゃ、不法侵入って言うんだよ……ってか、ぐっふっふって、どんなキャラだお前は?」
「こんなキャラ」
少女は不意に立ち上がると、くるりと一回転して片目をウインクしながら僕に微笑んだ。
はぁ、前途多難だ。