聡が瓶を埋めた時、男って変な事をするんだなと思ったし、いずれ近い内なのか、程度に考えていた。 だが、聡はデートには誘ってくれたし、映画館にも行ったが、桜の木の下に行こうとは言わなかった
…そして秋になり冬が来て寒々とした河原に行くような気にはならない季節になり、卒業式を迎えたのだった。
【もう…無いわ…聡…15年よ…】
【だよな…今まで同窓会に恭子は一度も来てくれないし…こんな経ってしまったけど…俺、あん時、約束したから…でも…恭子も結婚したし…約束を破ったこと…許してくれな…】
【…行って見てあったら…どうする…私たち…】
私はフロントガラスの向こう遠くを見ながら言った。
【行って見てか?…あった時は…恭子に任せる。人の奥さんに…無理は言わない!俺は…ケジメを着けたいんだ!気持ちの整理が着きさえしたら】
【行って…見ようよ聡】
聡はイグニッションキーを捻った
あの日、浴衣に下駄を穿いて下りた階段はそのままだった。
二人で照明の下を桜を目指して歩いた。
枝を広げて繁った葉が黒く見えた。
【恭子、これ、照らしてくれるか】
聡は私に小型の懐中電灯を差し出して手元を照らすように言った。
手には園芸用のスコップを持っていた。
聡は早速、目当ての場所を掘り始めた。
直ぐに桜の太い根っこにスコップが当たった。
…あの日、私この辺りに横になったんだ…と思い出す…
桜の木を見上げながら聡は 20?程の深さを掘り進んで行く…15分程経って
【!あった!恭子!瓶だ…ほら、見てみろ】
聡が手にした瓶には蓋が付いて無かった。
【あったね瓶!…】
私が聡の手の中を照らすと表面に粒々のついたあの茶色のオロナミンCの瓶だ!
【とにかく、下のベンチに戻ろう!】
2m程、聡が手を引いてくれてベンチに戻った。
聡が逆さまにしてスコップでコンコンと瓶を叩くと土か腐葉土のようなものがベンチの上にこぼれ落ちる…
最後に瓶の内側に白い陶器かプラスチックのようなものが斜めに引っ掛かって出て来ない。
上から照らすと底に落ちる。 じっと覗いていた聡が叫んだ!
【ラケットだ!テニスラケット!ほら、恭子も覗いて見ろ!】
聡が私に瓶を差し出す。
そうだ!あの日私が一度胸に着けたネックレスだ!
聡が何度か振っているとタイミングよくポトリとベンチにこぼれ落ちて来た。
鎖は着いて無かった。
【洗って来る!】
聡が水辺に駆ける!