テーブルには空っぽのカップが一つ。かなりの至近距離で見知らぬ男とみつめ合っていた。
周囲にはどんな風に映っているのだろう―。
『ちょっと―いいかげん離してください。なんだよ、アンタ…』
笑顔を崩さない男に負けるのが悔しくて―視線はそらさない。
『離さないよ!だって離したら逃げ出す雰囲気だろ?』
バレてた。でも。
『財布、返してください!』
『じゃ、俺に付き合って♪
…
『…警察呼びますよ!?』
思いきっていってみたけど。笑われた。
“財布拾ってやったのに?”って。
完全にナメられている。とにかく!そう思って男の手を払う。俺が逃げないと承知しているのか、男は笑顔のままだ。