「仮想現実?…確かに私はそう書いた。嘘じゃない…それは嘘じゃない!」
沈黙を破っての私の質問に義父はそう答えた。
「、、、じゃ今もその仮の現実なんですね?、、」
「何のことだ?暁さん」
「こうして会ってお話しをしてる今も、、、仮の親子でしょ?仮想現実は、、、どこで終わったんですか、お義父さんの仮想現実はどこまでが嘘じゃないんですかっ!仮想現実だからお互いにここまで来たんじゃないんですかっ!会えたんじゃないんですかっ!」
私は一気に言った。
「それはその通りだが」
「お義父さんの仮想現実が終われば、、、仮じゃ無くなる。現実に戻ります!この時間がこの世に存在しなかったことになって、、、今まで通りあの家で皆で暮らせませんか」
「私の仮想現実は…ここで相手が暁さんと判った時に終ったよ…」
「仮のお義父さんは勝手です!終ったなんて私に言ってくれなかった!私のお義父さんはそんな人じゃない!、、、、私はお義父さんは、優しくて、、逞しい、、私の思う通りにさせてくれたってメールに書きました。私は自分に正直に言います。仮想現実を信じて私は仮のお義父さんから抱いて貰いたくてここまで来ました、、、、この世に存在しない時間に抱いて貰うために来ました、、、仮想ならその時間を過ごしたらあの家に帰るつもりでした。、、、そうじゃなかったんですね」
「そっ…それは……」
「ここで、私じゃなく他の女性だったら…ゴルフで疲れたって帰るんでしょ
、、、夕方には家に、、、」
「それは…まぁ…」
「だったら、、、私の仮想現実も最後まで、、、終わらせて下さい、、そして現実に戻ったら今まで通り、二人ともあの家に帰りましょう。、、、幹夫さんと夏帆とお義父さんと私と四人で暮らせる、、、、」
「暁さんは…そのように割り切れるんだね…」
「これからの 2、3時間は、、この世に存在しない時間!お互いに共通の夢を見たい、、、」
「いいんだね暁さん…」
「綺麗で、、、静かなところがいいです、、、」
リクライニングシートが微かな音を立てて…車なエンジンが掛かった………。
私はチューリップハットを顔にかぶって横になったままだった。
車は左右に揺れたりカーブを切ったりして走り続けた…
やかて、登り勾配を感じて車が停まった。
私は車を降りても自動ドアが開いてもエレベーターに乗っても義父の踵を見て歩いた。
義父も無言だった……。
部屋に入って私は最初にお風呂の準備をした。
さすがに緊張感は取れない……お湯が満ちていく浴槽を見ながら深呼吸をした。