『ねえ、ふゆちゅきさん!』
『こらこら、“ふゆちゅき”やのうて、“冬月”やろ?』
『いーの!ね、おおきくなったら未夜[みよ]をここから出してくれる?』
『なぁんや、当然やろ?もうちょっとの辛抱や』
『うーんと…じゃあ、ずぅっとおてて、繋いでてくれる?』
『………。当たり前、やろ?』
* * * * *
「…………」
懐かしい夢。だけど毎日見る夢。
ただっぴろい部屋は薄暗い。寝起きの頭には懐かしい過去とただ昨日の出来事が焼き付いて離れない。
―昨日の出来事―なんて、毎日だけど、日課だけど…。
夜になれば、わたしはこの屋敷の主、笹塚親方様の部屋に行かないといけない。
それは悪夢の始まりでもあり、続きでもある。
『ッはぁ…んっ…』
別に出したくてあんな声出してるわけじゃないのに。
もう、恥じらいなんてのは無い。
これは“日課”だから。
例えば、歯を磨いて、髪をといて、学校へ行って…そして親方様と寝る。それだけだと、今は感じる。
望みがないなら、持つだけ無駄だと。ちゃんと私は理解してる。
「……冬月さん…」
それでも想うときがある。
そばにいて、そう願うときがある。