アリス、と声をかけた相手は解ってる。
大翔だ。
モト君と同じくらい人気があって、同じくらいなんでもできる…いや、ひょっとしたらモト君よりもなんでもできるんだ。
だって…モト君は…お世辞にも勉強は出来ないから。
いやいや、いいんだ!
人間は完璧より少ーし抜けてるくらいが可愛いんだ!
女子にキャー×2言われてるシャドウ・パペット
(バンド名ね)の二代柱の片方、大翔… あーイラつく! 邪魔だあ!!
くっそう…モト君を堂々と「アリス」と呼べる唯一の人間。
それを思うと羨ましくてオカシクなりそうだ。
大翔が宿敵になったのは、あの瞬間からだ。
アリス、と呼んでる大翔のことを知って、僕はある日の放課後聞いたんだ。
「僕もアリスって呼んでもいい?」
答えは簡潔。
長い足を組んだまま、目線は雑誌に向けて…
「やだね」
その一言は、強烈に僕をノックアウトした。
大翔には許しているのに。一年先に知り合っていたのが大翔じゃなく僕なら、許してくれていたのかな…?同じ部活で、同じクラスだった二人は僕には埋められない一年という月日で繋がってるんだ。
だから、ゆえに、僕はアイツが…
大っっ嫌いだ!