一人きりの部室で、描きながらフッと筆をとめた。
先輩のオモチャになってから2ヶ月か。
こんなんでいいはずない…
俺ばっかり苦しくて、悩んで、戸惑って…。
不公平じゃないか。
唐突に訪れた苛立ちは溢れるくらいで、俺はパレットナイフを振り上げた。
目の前の絵に突き立てようとした時、強い力で手首を捕まれた。
「なんの真似だ」
冷たい声に振り向くと、無表情な先輩がいた。
「…離せよ」
荒々しく振りほどく。
イラつく…はきそうなくらいだ。
「どうした?」
ほんの少し、心配そうな声に苛立ちが煽られる。
触れようと伸ばした先輩の手を今度は弾くように叩いた。
「…触るな!」
先輩が、見つめている。
もう、ダメだ。
「なんで、あんたはいつもそうなんだよ?
フリなんかするな!
俺に構うな!俺に興味があるような…フリなんかすんじゃねえ!」
先輩が仮面みたいに俺を見ている。
言うべき言葉が出てこないのか…。
「頼むから構わないで。俺は今までの俺でいたいんだ
あんたのオモチャになるつもりはないんだよ」