オモチャ、という単語に先輩の眉がつり上がった。
「じゃあ、何を求めてるんだよ、お前」
言葉に気温があるなら俺は凍りついてる。
だけど一度出た想いは最後まで出し尽くせ、と口の中で暴れていた。
「あんたに求めることなんて…な、なにもない。言ったろ?
あんたは暇潰しで…俺にチョッカイだして、俺は…わかんねえ、何いってんだ。俺は…だから…」
支離滅裂だ。
「そうやって拒否するんだな、いつもいつも…自分の気持ち偽って、目をつぶってさ…そのくせ、要求してんだよお前は」
静かな先輩の言葉。
初めて抱かれた時のような月あかり。
優しさのない光。
先輩が俺を引き寄せた。
抱き締めるんじゃなく、胸ぐらを掴んで。
「考えろよ、この馬鹿やろうが…お前が勝手に傷ついてんだ。俺がいつお前をオモチャにした?
オモチャは俺さ、お前じゃねえ」
目の前に迫る先輩の目が、深く傷ついている。
俺は、驚いて声も出なかった。
「俺は、お前が…くそ、信じらんないくらい好きなんだ。お前が俺を好きじゃなくても、構わないと思うくらいにな。
でも限界だ。
泣きながら、そんな風に俺に言ってくるお前はなんなんだ?」