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月夜の晩に 13

にゃんこ  2010-06-08投稿
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「好き…?俺を?」

先輩は頷いた。

「ああ。ずっと好きだったよ、俺は俺なりに伝えていたはずだ。
でもお前は…いつも外さないその眼鏡と同じように、壁を作って事実から逃げてたんだろ?」

好き…だった?
だった…。

先輩はため息をついて、頬についた髪を払った。

こちらを見返した先輩の目は、俺を映してはいなかった。俺を通り抜けて遠くを見つめていた。

「わかったよ、風見。
もう、やめよう。付き合ってたわけじゃないから、別れるわけじゃないな。
終わろう、俺たちは…俺たちからは何にも生まれないみたいだ」

抑揚のない声…。
俺は…。

「先輩、俺…」

葉瑠先輩はツイッと横を向いて、小さく呟いた。

「…疲れた。
バイバイ、風見」


バイバイ。

小さな声。
大きく響く、扉の閉まるおと…。

残された俺は、睫毛に残る涙の感触を感じていた。
感じる、という感覚が未だにあることが不思議だ。 だって、心には何も響いていないのに。

望んで手放した関係。

これで…元通り。

そう、何も、問題ない。

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