親方様は、屋敷内でも有名なほど美しい顔立ちをしている。
年齢はたぶん30歳くらい。
両親を早くに亡くし、会社の跡を継いだ。そう教えられた。
私はきっと屋敷という名の牢屋から出られない。
ずっと、このまま。
―――コンコン!
「──!…、誰ですか」
「仕事よ、未夜。さっさと支度なさい」
「……………はい」
仕事、とはつまり親方様の相手をしろということ。セックスをしてこい、と。
今は日曜の朝。
普段は夜ばかりだけど、きっと暇が出来たんだ。勝手で自由気ままな人だから、ヤリたくなっただけなんでしょうね。
そして、親方様の相手は他にもいっぱいいる。例えば今伝えに来た無愛想極まりない女性は“沙羅(さら)”。美人だけど、なにかと言って私に嫌がらせや暴言を吐く。
そりゃそうね。だって私は親方様のお気に入りの玩具だもの。
親方様が大大大好きなあの女にとっては屈辱。
『あんたなんて所詮親方様の道具でしか無いんよ!!あんあん鳴くだけの玩具なんよ!』
この前に少しおかしいイントネーションで怒鳴り散らされたこともあった。