……。
うん……?
窓から差し込んでくる朝日で僕は目を覚ます。
目覚めは、すこぶる最悪で……ついでに下半身は真っ裸だった。
「まだ、起きない?じゃ、これならどう!」
ブンっっ!
「どっせーーいっ!」
振り下ろされた、銀色に妖しく光る大鎌をベッドの上で反射的に転がって回避した。
ものものしくベッドにめり込んだ大鎌を僕は、凝視する。
「あっ、おはよー」
満面の笑顔で朝から接してくれるのか。
肩あたりまである紅い髪を二つくくりにし、全身を丈の短い漆黒のワンピースで包んでいる自称、悪魔ッコであるマウア。
尻部から生えた長く黒い尻尾がナウイ、117歳(17歳)のババァだ。
「よっ、ババァ」
片手をあげて、朝のアメリカンジョークを放つ僕に、もう一度マウアは大鎌を振りかざした。
「どっせーーいっ!」
次は、ベッドが真っ二つに粉砕された。
「ガン……女の子に、そゆことゆうと嫌われるよ」
笑顔だが、言いようのない圧迫感がある笑顔でマウアは僕に微笑みかける。
「そうか、忠告サンキュー、ちなみにお前の行為は女の子のみならず人類全般から嫌われるから、止めたほうがいいぞ」
僕はズボンをあげながらマウアに返してやった。
……ってか……。
ここで僕は重大なことに気付く。
「なんで、僕の家にお前がいる?」
まじまじと大鎌を粉砕されたベッドから引き抜くマウアを見つめながら僕は声を漏らした。
「だからぁ、魔王様の命令で……」
面倒くさそうに僕に語りかけるマウアの言葉に僕は口を挟む。
「待てっ、それは分かってる。お前は可哀相な僕の為に魔王に命令されて、願いを叶えにきてくれたんだよな」
「そう、分かってるなら聞かないでよね」
両の手を腰に当てて、ふんっとすました顔をみせるマウアに僕は続けてこう言った。
「それを百歩譲った上で聞くぞ?お前はどうして僕の家で寝泊まりしてんだ」
言いながら、明らかにマウアが羽織って寝ていたであろうプリティな骸骨がペイントされたタオルケットを指差す僕。
マウアは「あ〜」と納得したように頷きながら、片手の掌に握った片手をポンっとあてた。
「昨日、ガンが寝た後ガンのお母さんに会ってね、ガンの事よろしくって頼まれたんだぁ」
へぇ、つまり僕の世話係に抜擢……って。
そりゃないぜよ。