「お前、母さんと会ったのか?」
驚愕の事実に声を荒げる僕。
そりゃ、そうだ。こんな尻尾生やした『怪しげ』なのが母さんと遭遇したのだ。
ただで済む筈があるまい?
「うん、昨日の夜ね」
実にあっけらかんとマウアはそう答えると、頭の後で腕を組みながら僕に笑いかけた。
多分、恐らく、大丈夫だとは思うが、一応聞いてみる。
「お前さ、母さんに誰だって聞かれて何て答えた?」
「もち、悪魔」
ニカっと満面の笑みで答えてくれた。
はぁ……。
僕は片手で頭を抱える。
「お前、そこはかとなくバカだろ?」
「どうして?」
「誰だって聞かれて、悪魔って答えるバカがどこにいんだよ?」
僕の問いに対しマウアは頭の後ろで手を組んだ状態で、ついでに足を組むと口を尖んがらせて自分を指さした。
……疲れる。
これじゃあ『願い』どころか『悩みの種』が増えただけだ。
「……母さん何て言ってたんだ?」
「私が魔界から願いを叶えに来た悪魔だって言ったら、そうか、あいつの事よろしくって……ガンのおばさんは話が分かる人だね」
いや……おかしいだろ。
どんな会話だよ、それ?
朝から、今日の体力の七割近くを費やしてしまった僕はその場にバタンと倒れこむ。
「どしたの?」
仰向けになった僕をマウアが、じっと覗き込む。
「見てわからないか?疲れたんだよ」
……お前のせいでな。
「そんなんじゃ、将来悪魔になっちゃうよ?」
言い終わりと同時に僕の右腕をぎゅっと掴み、抱き上げる様にマウアは僕を起こした。
「んだよ、もう帰れよ。ほら、そこに机の引きだしがあるから……そこにある訳の分からんマシンに乗って魔界に帰れ」
ズビシっと自室の机の長い引きだしを指さしながら、しげしげと僕はマウアに告げる。
「がっこう、がっこう……」
僕の台詞は全くスルー状態で、まるで水上スキーの様に不動直立の僕の腕を物凄い力で引っ張るマウア。
「がっこうって、なに?」
不意に振り向いたマウアは、テヘッと茶目っ気のある笑みを見せた。
「学校ってのは……つまんないトコだよ」
「ふーん、でもガンのおばさんに頼まれてるからね、ガンが学校をサボりそうになったら、無理にでも連れていってくれって……」
僕は幼稚園児かっ!