「なんでそういう流れになんだよ、お前…バカ?」
沈黙のあとで、ようやく発された言葉がこれ。
相変わらず冷たい目であることに変わりはないけど、声に含まれていた、ゾッとするような毒は消えていた
「遊びたきゃ一人で遊べ」
軽い捨て台詞を浴びせて、教室から出ていくアキヒトを、僕は考えもなく追っていた。
謝らなくちゃ、という気持ちに押されていたんだろう…いや、アキヒトという人間に興味があっただけかもしれない。
待ってよ、と追っかける僕と胡散臭い目で振り返るアキヒト。
これが出逢いだ。
もし僕が後を追わなかったなら、運命は変わっていたんだろうか?
オレンジに輝く夏の日差しに映るあいつの背中を僕はまだ、鮮明に覚えている。
決して待ってはくれないくせに、僕がついてきているかどうかを確かめるあの目も。
振り返り、振り返り、確かめながらその両目は確かに望んでいたんじゃないか?
僕が追い付くことを。
そして、僕は走ったんだよ
この録でもないやつと友達になるために。