「これ食えるんだぜ」
アキヒトは笑いながらタンポポの葉をかじった。
僕は真似して、吐いた。 瞬間、唐突にアキヒトは笑いだした。
笑って笑って、呆れて見てる僕の顔を「間抜けな鳥みたいだ」とまた笑って、クローバーで埋め尽くされた原っぱに倒れ込んでさらに笑っていた。
青い青い空。
大きな白い雲。
照りつける眩しい太陽…こんな絵はがきの世界で響く初めての笑い声。
僕も笑った。
タンポポの青臭い汁を吐き出して。
食えるんだ。
そういってアキヒトは他の雑草も(僕は名前もわからない)次々に口に入れて平気な顔して飲み込んだ。
僕は単純にすげえなあ、と呟いた。
何回真似しても僕には飲み込めない。
「俺はヤギだ!って思って食うんだよ」
僕らは走った。
それこそ無意味に。
マンション建設予定地の広大な空き地を。
アキヒトは「入るな」と書かれた立て看板を
「入らないようにさせてみろ!」
と叫んで思い切り蹴りを入れた。
雨ざらしの木製看板はあっけなく真っ二つ。
それからニヤッと笑って僕に嘯いた。
「許可がおりたぜ?」
夏は始まったばかりだ。