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ライアー 9

にゃんこ  2010-07-19投稿
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「…おい、てめえ、名前を言え」

張り付きそうな喉から無理やり声が出た。

「ふ、藤田悠です」

男は途端に笑い始めた。
「そうか!てめえがか!
おい、てめえのふざけた母ちゃんに言っておけ!
俺んちに今度いちゃもんつけやがったら、あいつの腕を折ってやるってな!
いいか?
俺はな、れっきとしたあいつの親父なんだよ、てめえの母ちゃんに口出しされるこっちゃねえんだ。
あいつは犬よりタチがわりぃから躾てやってんだ。
今度うちに電話なんかしやがったら、てめえんちも痛い目みるぜ?」

男は笑いながら笑わない目で扉を閉めた。

僕は震えていた。

間違いなくアキヒトは扉の向こうにいるのに、何も出来ない無力な自分。

凹み、傷だらけの扉の向こうから男の怒鳴り声が聞こえた。

それに続く、うめき声。

僕は叩いた。
扉を叩いた。

怖かった。
逃げたかった。
それでも叩いた。

叩き続けた。

泣きながら、泣きながら、何度も何度も何度も。

何度も。

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