ぼろきれだってここまでじゃない。
上半身裸で、壊れたオモチャみたいに放り出されていた。
ズタズタな襖の奥にアキヒトはいた。
こぜまい部屋の真ん中に。
僕は膝をずって、アキヒトのそばへ…一瞬死んでいるのかもしれないと考えて、固まった。
触れるのも躊躇われた。
血だらけ。
あざだらけ。
新しい血、こびりついた黒い血…ああ。
声もなく見下ろす僕に、アキヒトはゆっくり視線を合わせた。
その奇妙な表情には
なぜ? と
わかっただろ?
の二つの意味が滲んでいた
なぜ?の問いには
「友達だから」
わかっただろ?の問いには
「わかりたくない」
ね、アキヒト。
いまならこんな風に言える僕も、この時は言葉はなく泣きながら頷いただけだったね…?
「あいつは」
ひび割れた唇から出た。
「出てった」
ゆっくり、だが意外にもしなやかにアキヒトは起き上がった。
「いってえな…あのやろう…歯が折れたぜ」
「なんで?」
僕の声が、この部屋を切り裂いた。
甲高い、パニック寸前の声が空気を揺らした。