あの男は虐待の罪で一年の実刑をくらい、アキヒトは「たったの一年かよ」と吐き捨てた。
ことなかれ主義の僕の父さんは片がついて胸を撫で下ろし、「母さんを怒らせると怖いな」と呟いて僕を笑わせた。
アキヒトがいつか父さんを自分の子にする、と言ったのを思いだし、さらに僕は笑ってしまった。
そして。
アキヒトはそれから、施設から学校に通った。
夏休み、アキヒトのカリスマに洗脳された男子らは、寵愛を受けようと画策する大奥の女みたいに付き従った。
僕はといえば、むしろアキヒトと集団で遊ぶことは少なく、アキヒトに従うような取り巻きを敬遠していたような気がする。
アキヒトは時々、施設に許可をもらってうちに泊まりにきた。
そんなときは楽しくて仕方なかった。
五年生になったある日、すっかり黒くなり、さらさらと夜風に靡く髪をかきあげてアキヒトは僕に話した。
「悠、俺は変わる」
僕んちの屋根に登って秋の星を見上げていた僕は、深い意味もなく「うん」と答えた。
夜風に聴かせた決意表明は本当のところ、かなり深い意味が込められていたんだと今はわかる。
今、解ることばかりだ。
ね?アキヒト…。