アキヒトは唇を歪めた。
「悠、俺がお前には何もしないと思ってるのか?
調子に乗るなよ…俺にとってはお前も馬鹿な取り巻きも同じなんだぜ」
僕は笑った。
「怖がると思う?
お前の父さんに凄まれて、お前が死んでるんじゃないかって思った瞬間に比べたら怖くなんかないよ。
僕にはお前の、お前が駆使してる力なんか通用しないよ。僕はお前に媚びはうらない。
僕はお前が正しいと思えない。僕は…」
アキヒトの、額が僕の額に押し付けられた。
間近にある整った顔。
僕は逸らさず正面からにらんだ。
「あの先生のことだけじゃないの、僕は知ってる。
お前、早川先生をゆすってるだろ」
化学の女教師だ。
40代のオールドミス。
「だからどうした?
ゆすられる方が悪いのさ…盛った猫みたいに俺と寝たんだからな。
化学は苦手でね…お前にも流してやってもいいぜ?
…早川がお前に泣きついたんだろ」
そのとおり。
一番仲のいい僕に、どうしようもなくて泣きついた。僕は早川先生もアキヒトも軽蔑していた。
けれど、仕掛けたアキヒトがの方により罪はある。
冷たい額。
睨む僕の唇に、アキヒトは唇を重ねた。