無防備なアキヒトを僕は抱きしめた。
あの日、アキヒトがしてくれたみたいに。
背中を叩いた。
優しく、優しく。
「美恵子が俺の母さんだったら、俺もお前になれたのかな…」
泣きながら、しがみつくアキヒトを泣きながら僕は支えた。
僕に、なりたかったの?
だから僕には嘘がつけないの…もう一人の自分だから…?
「君は君だよ。
君のままでいてよ。
アキヒトがいないとつまらないよ…アキヒトがいないと寂しいよ」
この世界の誰もがアキヒトの生き方を否定しても、僕だけは見ていよう。
肯定も否定もしない目で、ただ見ていよう。
生きて欲しい、ただ、生きていて。
「愛してる」
それは恋愛じゃない。
友情じゃない。
もっともっと、言葉にならない奥底からの感情だ。 自然を愛するような、家族を愛するような、大きくて眩しい愛。
アキヒトが体を起こして、何かをいいかけた時…
僕らは影に覆われた。
その影は素早い動きでアキヒトの肩を押さえ付け、体ごとぶつかって握っていた煌めく何かを胸に突き立てた。
びっくりしたような顔で彼は突き立てられたナイフを見下ろして…僕の上に崩れ落ちた…。