まだまだ暑い日が続いているけど、時折かすかな涼風が耳元を通りすぎる9月なかば。
俺が対して面白くもない部活を終えて自転車を漕いでると、うちの制服着た奴が道端にしゃがみこんでいた
なんの気なしに通り過ぎようとした時、それが藤田悠先輩だと気づいた。
あの嘉納アキヒト先輩の幼なじみ。押し掛けるリポーターに一言も口を聞かなかった人。
全校集会でこれみよがしに泣いて見せる奴等に混じって顔をあげて前を見据えていた人。
更に上昇した嘉納先輩の株価の裏で密やかに大暴落している人。
平気な顔してるね、幼なじみがあんなめにあったのにさあ…
あの事件のとき、目の前で刺されたの見たんだよね…なのに全然元気そう
実は嫉妬してたんじゃないの〜?ほら、自分は地味なのにさあ…こういう時本性が解るよね…アキヒト先輩可哀想
女子どもの中傷、もともと嘉納先輩とのなかを僻んでいた取り巻き達の憎しみ。
それらを全て、藤田先輩は受け止めていた。
なんの釈明もなく、普段どおりに。
俺は前からこの人に興味があったんだ。
自転車から、降りてどうしたらいいかも解らないままに近づいていった…。