それから、呆れるくらい俺の目は先輩を捜していた。
本当に不思議な人だ。
淡々と毎日を送っている。徐々に落ち着きを取り戻しつつある校内を、同じように過ごしていた。
センセーショナルな事件が新鮮な輝きを失い始めているのにつれて、逆に先輩に対しての風当たりは強まっていた。
先輩が通ると、下級生、同級生問わずヒソヒソと話す連中。
通りすぎる瞬間、聞こえるように「冷血漢」
と呟く生徒。
プリンスを失った捌け口をぶつけるようにゆっくりと彼らは先輩をターゲットにしはじめた。
ある日、薄暗い校内の裏庭に先輩がいるのを見つけた先輩は華奢な体を抱き締めるように、自身を支えるように自分の両腕を回している。
近づいて様子がおかしいのに気づいた。
もともと色白な人だけど、今日は蒼白といって間違いじゃない。
駆け寄った俺に先輩は、少し微笑み
「やあ」
と囁いた。
額に汗が浮いている。
「どうしたんですか?
具合いでも悪いんじゃ…」
「何でも…ない」
俺は直感に従って、先輩の抱えてる腕をほどいてシャツを捲りあげた。
隠そうとする弱々しい抵抗より早く、俺の目は紫色の大きなアザを見つけていた