「うわっ…これ、酷いですよ!大丈夫なわけないじゃないですか」
先輩は木にもたれたまま、大丈夫、と繰り返す。
大丈夫なもんか!!
沸き上がった怒りをぶつけるとこがなくて側にある木を蹴っ飛ばす。
「誰がやったんですか?
これまでもあったんですか…?先輩!先生に言わないと…」
黙ったまま、力なく微笑み首をふる。
俺が引き上げた乱れたシャツ…頼りなげな瞳。
俺は慌てて目を逸らした。
何を考えてんだ、こんな状況で!!
「本当に平気なんだ。これくらいなら死んだりしないしね…もちろん、痛いのは嫌いだけど」
声にも力がない。
先輩、すみません…俺、こんなときに貴方に一瞬欲情してしまいました。
心で謝罪する。
「と、とにかく、帰りましょう。俺のチャリに乗って下さい。漕ぎますから」
「ありがとう、大原君」
名前、忘れてないんだ。 覚えてくれたんだ…。
こんな状況でまたも嬉しくなってしまった俺はオオバカヤローだ。
後ろの座席に先輩を乗せて俺はチャリを力一杯漕いでいた。
細い指が俺の腹で交差している。
普通男同士でこういう乗り方はしないのだろうが、僅かな振動が堪えるのだろう