先輩の部屋らしいとこに寝かせて、ようやく一安心した俺は青ざめた顔を見下ろした。
さっきのキュンときた感情がまだあるかどうか確かめて、健在であることに苛立ちを感じる。
相手はよりによって今一番の嫌われものだし、どうみたって男だし。
対して話してないし、どんな人かも知らないし。
あー!!イラつく!!!
静かに寝息を立ててる先輩の顔がいたいけで、幼くみえて。
胸が痛くなる。
タンポポを見ていたあの目…寂しげな顔が瞼の裏に焼き付いて離れてくれない。
じっと寝顔を見ていたら、先輩の目からポロッと涙が零れて枕へ吸い込まれた。
夢を見ているんだろうか？
悲しい夢を…嘉納先輩の夢だろうか？
二人はどんな関係だったんだろう。
取り巻きたちが割り込めない空気が二人にはあった。それは誰もが認めていた。
俺の勝手な妄想かもしれないけど、藤田先輩といるときの嘉納先輩はどこかいつもと雰囲気が違っていた。
そういう話が好きな女子の間で秘かに「妖しい関係」として噂があったのも知ってる。
まあ、根も葉もない噂だと…思っていたんだけど。
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