「…誠司君、起きて」
夕方の六時を指す時計の針
俺は起こされてギョッとした。
いつの間に寝ていたんだか先輩の寝ているベッドに図々しくも突っぷしていた。
うわっとか変な奇声あげて謝る俺を、先輩はキョトンとした顔で見ていた。
「謝るのはこっちだよ。ごめんね、心配かけて…大丈夫、単なる寝不足なんだ」
僅かにはにかんで頭をかく先輩が堪らなく愛しくて目を逸らす。
どうしよ…まともに顔も見れやしない。
「最近寝れなくて」
「…泣いてましたよ」
先輩は「そか」と小さく呟いた。
「嘉納先輩の夢っすか」
子供の嫉妬みたいな言い草に自分を殴りたくなる。 でも気にかかるから仕方ない。
先輩は仕方ないな、という風に頷いた。
「夢が幸せすぎて、起きるのが辛くて」
涙を、この人は一人でながしていたのか。
周り中が泣いていた時には必死で自分を保っていたのか。
俯いたその睫毛にのこる悲しみ…シーツを握る細い指先…
俺は先輩を抱き締めていた
息がとまるくらい切なくて
この人を守りたい。
本気でそう思った。