うざいオバハンもオッサンもいないある日の午後。
暇にしてると足音が聞こえてきた。
「アキヒト…」
病室の戸が開く音。
静かに、俺の名前を呼ぶ声がして努力のすえにそっちを向いた。
「よ」
最小の挨拶。
入り口で固まってる悠に、笑って見せた。
なんだよ、あの顔ww。
でけえ花束だな〜、いらねーけど。
つうか置くとこねえし。
学校関係者やらなんやらで花だらけの病室に圧倒されたように立ち尽くしている悠は、ようやく足を進めて…ん?
後ろのデケエ男、誰だ?
悠は慌ててそいつを引き寄せて並んだ。
「僕らのイッコ下の…大原誠司君。僕と一緒にいつもお見舞いに来てくれてたんだよ」
…知らねえ奴に無防備な姿晒してたかと思うとゾッとするが…。
「それは…ありがとう。学校から結構離れてるのに悪いね」
と弱々しく微笑んどく。 ふ、とため息をつく悠。
「ねえ、疲れてるのに芝居しなくていいよ。
この人の前では大丈夫だから…余計なことは絶対言わないし信用して。
僕と同じにしていーよ」
…ほお。
やっぱり俺は浦島太郎だなあ、知らん間にそんなことになってるとはねえ?
デケエ男は黙ってる。