悠の攻撃をかわして廊下を走りながら、微妙にイラつく自分の気持ちに気づいた
「愛してる」
悠の言葉だ。
刺される直前の。
あれは、もちろん恋愛じゃない。俺だってんなのわかってる。
…なんだ?
俺はなんでイラついてんだ…。
悠に大事な人ができて…そうか、俺は1人になったんだな。
いや、そうじゃなくて…俺のなかの聖域である悠はもう俺のもんじゃない。
つまり、寂しいんだ。
ちえっ、つまんねえ感情植え付けやがって…。
感情の名前がわかってみると余計にイライラする。
不覚にも注意がそれて、瞬間衝撃を感じた。
やべえ!
止めたけど遅かった。
恐る恐る目を開けると、目の前に転がる人間の姿。 対してスピードの出ない車椅子でも、もろにぶつかれば凶器だ。
くそ、みーちゃんにレクチャーされてたのに!
「おい、大丈夫か?」
少し引いて、周りを見る。誰もいなきゃトンズラしても…と、スッ倒れていた奴がゆっくり起き上がった。
「ってえ〜…」
げえ。
頭めっちゃ茶髪で長髪を後ろで乱雑にまとめてる。 …あー、面倒そうな奴。