「…何の話?」
…こいつ、誰?
男は笑って、俺の正面に来た。その目は笑っていない…見透かすように、鋭い。
「俺はね、お前が殺した早川先生の甥っ子だよ」
…なあるほどね? 警察もなにやってんだよ。
俺にこーゆーのが近づかないようにするのが役目だろーが!
「で?俺にトドメを指しに来たわけですか?」
「お前、なあんとも思ってない?朋子が死んだこと」
俺は逆撫でするのをわかってて、ニヤリとした。
俺を殴ればコイツは刑務所行きだからな。
「悪いとは思ってないですよ。なんで俺が思わなきゃなんないわけ?
そもそもさ、取り引きを持ちかけたのはあんたのおばさんだよ。
金をやるから抱かせろってさあ。で、俺は金はいらねえっつっただけ」
と、話すのはここまで。 万が一レコーダーなんか持ってたらヤバいからな。
男は一瞬、煌めく目で俺を射抜き、それから笑わない目で笑った。
「面白いよ、お前…」
「俺は面白くねえ。恨みがあるのはこっちだぜ?
大事な時期に…」
男の手が唐突に俺の首に伸びた。
じわじわ締める。
誰も気づかない。
男は俺の首を上げて、そのまま唇を押しあててきた…