ぐらぐらする、胸を鷲掴みにされて引き倒されたような感覚が、ようやく退いていった。
俺は乱暴に、力の限り圭を突き飛ばした…情けない全力。 圭に痛みを与えることさえできない…いや、痛かったのか?
傷ついたような顔してやがる。
「大丈夫か?」
「うるせえ、構うな。俺に触れたら警察呼ぶ。
お前の素性明かせばもう来れなくなるぜ」
…大体、なんで俺はそうしないんだ?
ゲームだからか?
ならここらでもう終わりにしないとな…。
「大丈夫ならいい…俺は…本当にすまない、最低なこといったな」
へえ、しおらしい。
本心かなんてわかるもんか
「カッとしたんだ、お前が虐待されてたことは報道で知ってたのに…」
自分に醜い一面があると初めて知った人間の顔。
俺と違って、圭は偽善者ならぬ偽悪者なんだろう。
復讐心ってすげえな、普通のやつを壊しちまうんだからさ。
「…お前の父親は今、女と暮らしててかなり離れたとこにいる。
だからここに来たりはしない。君の親はあの男が出所した時にかなり手切れ金を渡したしな…それには君に近寄らないという条件が含まれている。だから…安心していい。本当に、すまない」