「お前はああ!
俺の手をみろっ!
こ、この傷だらけの手を!貴様にわかるのか?
メイド服のフリルがどれだけ繊細かつ微妙か!
袖口の膨らみの適度な大きさ…パニエの強度、通好みの絶対領域の幅…無論、靴下の長さに合わせ、男子の胸に丸みを持たせるトップのリボン…それら全てを吟味し、かつスピーディーに仕上げたこの俺の苦労がわかるのか?
えっ?
この馬鹿旦那が!」
一息に話すにはかなりの肺活量を要したこのセリフを奴はあっさり
「わかんない♪」
で片付けた。
…どうやら死にたいらしいな…。
真夏の陽炎のようにユラリと立ち上がる俺に向かってコットンは扇子の影で不敵に微笑んだ。
「わからない。わかるはずもなかろうさ」
…何を!
俺の血と汗と涙とかーちゃんの心配と、妹の軽蔑の結晶を…!
「着てみねば所詮ただのフリルにまみれた黒服だ…そこまで言うなら俺の前で着てみるがいい!
そのこだわりのメイド服とやらをな!」
!!!
な、なにぃ!
…てゆーか誰なんだ貴様!
チキショー、やってやろうじゃないか!
寸法はバッチリだ。
俺のメイド服姿をメイドの土産にしてやるぜ!