妹の化粧品を借りて軽くメイクした。
…女ってすげえな…こ、こんなに種類があるとは。
ごく簡単に済ませて、いざ勝負と行こうじゃねーか。
とか思って鏡を見ると…そこには可愛いメイドさんが俺を見返していた。
…これ、俺?
す、凄くない?
レベル高くね??
俺、こんな可愛かった?
コットンを薄味と表現したが、実は俺も顔立ちはかなり地味だ。
だが、もしやそれが幸いしているのでは?
コンプレックスだった華奢な体も、色白も、女子に変化するには最適だったらしい…。
か、可愛い。
鏡に微笑んでみる。
可愛い…やべえ、自分にキュンと来ちゃったぜww
とかバカやってたら、いい加減痺れを切らしたコットンが「もーいーかい」
と苛立った風に聞いてきた
ふ。
俺をみて吠え面かくなよ!
「もういいよ」
声に勝利の響きが滲む。
高二男子の若旦那が俺を振り返って…正に、正に驚きのあまり口をぽかんと開けた。
この瞬間俺は報われた。
夏休みの大半を裁縫に費やしたこと…妹に「お兄ちゃんの変態!」と罵られたこと…かーちゃんに「悟…あんたちゃんと友達いるんでしょうね」と涙ぐまれたこと…全て、全てが報われた