「澄越は全部知っていたんだ。でも、あまりに理不尽な弟の死を受け入れられずに…それで…」
美月は声を上げて泣いた。
それは自分の生徒が死んでしまったという悲しみだけではなく、
何か計り知れない大きな悲しみが原因でもあった。
「…問題は氷牟田なんだ」
「………?」
「氷牟田亮司、という男は…存在しない」
「?どういう…」
「名前も住所も架空だ…どうしてこんなやつがうちの学校にいたのか…」
「…協力者、そうだ!彼には協力者がいたの!私が意識を失う寸前に、声は聞き覚えあるような…顔は見えなかったの。
それに澄越さんたちの計画を逆手にとったという事も言っていた気がする」
「誰なんだ…そいつが氷牟田を学校に送り込んだ……」
「何か少しでも接点が分からないことには…。どうして…澄越さんをあんな目に…!」
倉真は美月を慰めたが、不可解な事が一つ出来た。
澄越三春の計画を、逆手にとった。
協力者がいた。
「氷牟田亮司という人間は、美月…一年生から氷牟田亮司でなくちゃいけないよな」
「?ええ…」
「律子は中学の頃、お母さんが再婚した都合でうちの学校に来た…」
「?新島さんがなぜ…」
「再婚相手の家に律子は住みたかったのかな…。義理のお父さんがどうしてもって、頼み込んで、こっちに住んでるんだとしたら…」
美月ははっと気付いて、倉真を止めた。
「そ…それは、待って倉真くん。憶測の域を出ないわ」
「澄越を」