美紀は学生時代から男にちやほやされる体質で、今の夫もその中から選りすぐった男だった。
自分では気にしなかったが、高校頃から、体のラインが強調される、女らしい体つきになっていった。
社会人の頃は何度もセクハラに遭ったが、結婚後、直ぐ退社した。
ー見れば誰もが放っておかない肉体ー
という自負は少なからずあった。
その自分が今、一回りも若い男に、
3日間も禁欲をさせられている事実が、
美紀を陵辱していた。
ー明朝、
夫を送り出したら、直ぐにでも功一郎と会いたい。彼に襲いかかってしまいたい。ー
下着を穿き替え、携帯電話をリビングのテーブルに置き、じっと時が過ぎるのを待った。
「ただいま、どうした美紀?電気も点けないで」
「あ…お帰りなさい。少し眠ってしまっていて…」
暗い部屋に、携帯電話に着信を知らせている灯りが明滅していた。
「美紀、携帯光ってるぞ?」
美紀が眠っている間に、功一郎から連絡が来ていた。
「ああ、お母さんからかな…。この前電話しても出なかったから」
冷や汗がどっと出たのを感じ、
美紀はその場をやり過ごした。
着信は電話でなくメールだった。
光っただけではどちらか判断出来ないように、美紀の携帯電話は設定されていた。
(功一郎さん功一郎さん功一郎さん…)
”いよいよ明日からですね。僕もうずうずしています。お互いに最高の下拵えが出来ましたね。”
最高の下拵え。
食材に例えられ、もてあそばれ、
それでも美紀はそのメールがとても嬉しかった。
風呂では体を入念に洗い、
妄想して、達してしまわないよう、
平常心で美紀は振る舞った。
翌朝。
「いってらっしゃい」
「行ってくるよ…ん…美紀」
キスの後、夫は笑顔で会社へ向かった。
ばたん、とドアが閉じられた。
美紀は、唇を手の甲でぬぐった。