「な…なん…なんで、見てるの?俺、なんかした?」
僕は僕にぶつけられる彼からの言葉を全て噛み締めていた。
この瞬間。
この時は僕らは二人だけ。「時間」を「共有」している。
痛くなる…心臓が。
彼に近い体半分が、抑えが効かないくらいにざわめいている。
僕は笑った。
待ちに待っていた一言をぶつける瞬間がきた。
「嫌いだからだよ、小早川さんが。大嫌いだから」
全身に鳥肌が立った。
この刹那に浮かべる彼の顔が見たかった。
僕は見つめた。
とるにたらない虫けら以下の僕に「大嫌い」と言われた人気者の顔を。
彼は、絶句していた。
一旦開いた唇を閉じて、また開いた。
何度となく淫らな行為を頭のなかでしていたにも関わらず、たった一つのその仕草だけで、妄想を上回るくらい官能的だと僕は感心していた。
「大嫌い?」
繰り返し反芻している。
きっと言われたことがないんでしょう?
こんなにはっきり、否定されたことも。
「そうだよ。僕は君が大嫌いなんだ。その顔も、声も態度も全部」
追い討ちをかける。
それが、呪縛を解いたみたいに彼は予想外な行動にでました。